■ 2nd album(2014年)
山崎昭典 / 海のエチュード
(Amazonでも購入可、iTunes, Spotifyでも試聴可能)
レーベル:sukima industries
価格:1980円(税込)
アートワーク/中尾めぐみ
マスタリング/大城真
京都・丹後半島在住のギタリスト、山崎昭典の約9年ぶりのニューアルバムが完成。
幼少期よりクラシックギターの教育を受けて育ち、大学時代に電子音楽の世界に魅了された山崎は、伝統的なギターのスタイルと実験的な電子音響の融合、というテーマを自らに課し独自の音楽を展開してきました。
今回の作品には、日々の生活の場であり、インスピレーションの源泉でもある丹後の海を端正なコンポジションで描写した「海のエチュード」三部作や、師・鈴木昭男 の楽曲を新たな解釈で採り上げた「Ta Yu Ta I #11」、京都在住の音楽家・中川裕貴との即興演奏によるコラボレーション「seventh phase 」を含む全六曲を収録。
音響面での実験を試みた前作を踏まえ、本作は生ギターのシンプルで美しいサウンドを中心に据えた、優美で力強い楽曲が並びます。
マスタリングは音楽家/美術家として活躍し、エンジニアとしてテニスコーツ等を手がける大城真、アートワークは奈良在住の画家・中尾めぐみが担当しています。
収録曲
1, Heaven
2, Ta Yu Ta I #11
3, seventh phase
4, 海のエチュード第1番/ etude of the sea No.1
5, 海のエチュード第2番/ etude of the sea No.2
6, 海のエチュード第3番/ etude of the sea No.3
『丹後もやっと春めいて来た。ここ数日、昭典さんの新譜を聴いて過ごす。中に「た ゆ た い」という曲があって、2001年に Berlinの アンサンブル・グループ Zwischentoene の委嘱作を、丹後の太 古の森にある「霧降りの滝」で指孔の無い手づくりのフルートで演奏し、彼の助けでそれを構成した時の命名によるものだ。丹後は、荒波の印象で語られることが多いけれど、このエチュードに納められたギター曲のように「ひねもす のたりのたりかな・・」の情景も知ってもらいたいですネ。このCDを、浜のカモメたちと聴いてみたくなった。』鈴木昭男(サウンド・アーティスト)
『ここで聴かれる山崎さんのギターテクニックは、確かに聴いていてて凄みを感じさせるところもありながらも、それは、その一瞬の情景を照らし出す、何ものかに変わってゆく...。ここで聴かれる旋律の余韻ひとつひとつが、ジャケットで使われている、奈良在住の画家・中尾めぐみさんが描く海の雰囲気のように、穏やかでいながらも、予期せぬ出来事をも受容してしまう美しさが広がっています。』
寺田兼之(PASTEL RECORDS)
■ FOSSIL STUDIO 1st album(2018年)
池井保+山崎昭典/海のアンソロジー

レーベル:FOSSIL STUDIO
価格:2200円(税込)
アートワーク/川口優子(オーデザイン)
マスタリング/大城真
90年余り丹後半島に根ざし、そして嘘偽りなく丹後を語り続けてきた詩人・池井保氏。海を崇敬し、その深い洞察から産まれた詩選"海のアンソロジー"をギタリストの山崎昭典と共に奏でる。
またボーナストラックには、丹後半島の廃村になってしまった小脇に最後まで残った老夫婦を池井氏が自ら取材し、その地に昔から伝わる逸話と組み合わせ創作した"小脇の物語"をサウンドアーティスト・鈴木昭男氏と共演した音源を収録している。鈴木氏の音楽家としての一面を存分に堪能できる貴重な録音だ。
朗読は池井氏自らが担当し、約15年前に収録され地域限定でしか発売されなかった2枚の秘蔵CD-Rを1枚のCDに収録している。
収録曲
1, 山の口あけ
2, ぼくらの村
3, こどもたち
4, あかとんぼ
5, 鬼灯貝のうた
6, 磯乞食
7, オホーツクの海
8, 海
9, 浮標の旅
10, うみはひろいよ
◽︎ボーナストラック
11, 小脇の物語(池井保+鈴木昭男)
『ことばと音の関係がとても親密な、至福のコラボレーション。池井さんの魅力的な声による、ゆったりとしたリズムの朗読は、どこか音楽的で、ひとつひとつのことばが耳に心地よい。そこに山崎さんの叙情性を帯びながらも絶妙に抑制された音楽が重なると、詩のことばが持つ想像力は何倍にも増幅され、より鮮明なイメージが頭の中に広がる。何度も何度も繰り返し聴いて、想像の丹後の海を楽しみました。』
浅利大生(sukima industries)
■ FOSSIL STUDIO 2nd album(2019年)
カタリコト(安田敦美+山崎昭典)/ひかりのおはなし
(iTunes, Spotifyでも試聴可能)
レーベル:FOSSIL STUDIO
価格:1650円(税込)
アートワーク/川口優子(オーデザイン)
マスタリング/大城真
カタリコトは、イギリスの音楽雑誌”WIRE”や音楽家/批評家のDavid Toop氏にも賞賛された山崎昭典と、安田敦美による京都在住のアコースティックユニット。これまでに鈴木昭男、山内桂、藤枝虫丸、Steve Eto、drowsinessなどとの共演・コラボレーションを重ねている。
今作は活動拠点である丹後半島・FOSSIL STUDIOで制作を行い、山崎昭典のギターと安田敦美のボーカルが繊細に絡みあう絶妙な世界観を作りだした。作品からは、ほのかに丹後半島に面する日本海の香りが漂う。
マスタリングは、テニスコーツ、王舟、角銅真実のレコーディングに携わる大城真氏が担当、アートワークはオーデザインチャンネルの川口優子が担当した。
台湾や日本の音楽を紹介するサイト"UROROS"や中国のサイト"微博"で紹介されるなど話題となる。
収録曲
1, 彼岸の空に
2, 箱庭の鳥
3, コモリビ
4, ひと月とか
5, ひかりのおはなし
『はじめて2人の音楽に接した時、その大気圏を突き抜けてどこまでも伸びる声と、それを優しくも支え引っ張り躍動する ギターに新鮮な居心地のよさを感じた。その後数年のお付き合いをしてきたが、最近名称を「カタリコト」と変えてCDア ルバムをリリースした。かれらの方向性は変わらず宇宙に向かい、その音楽は惑星地球に広まるだろう。』
山内桂(salmosax奏者)
『丹後半島の香りを乗せて全世界へ放たれた声楽と弦楽器から紡がれた音は、アーティストとして持つべきストイックな心と姿勢から放たれる。本来はストイックな姿勢から放たれる音は鋭利な音になるとイメージするが、何故ここまで聴き手の心情の細部まで動かすほど優しく滑らかでストイックな音が紡がれるのだろう。こんなに優しくも厳しい音との向かい方には一生かけても嫉妬し続けると思う。』
葛西直樹(drowsiness)
『一把吉他,一幅好嗓音,京都Acoustic二人组カタリコト今年限定发售迷你专‘ひかりのおはなし’收录曲“箱庭の鸟”MV发布。天气越来越热,清凉、清新下下。
(和訳)
ギター、よい声、京都アコースティックデュオグループが、今年のミニアルバム「ひかりのおはなし」の収録曲「箱庭の鳥」のMVを公開、彼らは限定版CDをリリースしました。 暑い日が続きますが、聴くと涼しくそして爽やかになっていきます。』
微博(日音狗J-MUSIC)
■ AKI / SAGAING(サガイン)2020年
価格:2000円(税込)
発売日:2021年2月20日
山内桂(salmo sax)、山崎昭典(Gt)、米増博俊(Bass)によるユニット”SAGAIN(サガイン)"。山内桂の楽曲をシンプルに謳う「静かに深く、そして躍動する音たち」。
収録曲
1, Aki
2, Kahe
3, Kitam-Yu
4, Ams.
5, Far East
6, Saga
7, Kah Kah
8, Kitam-yo
小さなレコード会社 Jvtlandtは、主にフリージャズジャンルでのリリースで知られています。 そのため、トリオのサガインのアルバム「アキ」を聴いたとき嬉しかったです。 サックス、ギター、ベースの心地よいアコースティックジャズです。 サックス奏者の山内桂がサガインプロジェクトを担当し、音楽制作を行っている。 ギターは山崎昭典、アルバムの3曲にベースの米増博俊が参加。
音楽には癒しの効果があります。 コロナ危機により国が閉鎖されたと同時に、私の郵便受けに到着した。 それ以来、それはあまりにも多くの逸脱なしに静かに行く日常生活のための精神的に持続するサウンドトラックでした。 美しい晴れた夏の日の波打つ小川のようです。
日本のアルトサックス奏者の山内桂は、日本の実験的、前衛的なシーンでユニークな人物です。彼は、日本の大都市の伝統的なクリエイティブセンターから遠く離れた産業都市の別府出身です。 70年代前半の20代前半にサックスを手に入れましたが、2002年になって仕事を辞め、音楽に専念しました。彼は非常に独創的なアプローチを開発し、呼吸と予備の吹き込みを変換および変化させる手段としての楽器の微妙な音響特性を探求しました。
アキは、ギタリストの山崎昭典とのデュオ、しばしばベース奏者の米増博俊とのトリオで、時空の波を前に後に動く音に焦点を当て、山内のオリジナルの曲を演奏します。 サガインは、山内と山崎が台湾と日本でツアーを終えた後に2018年12月に録音されたアキのデビューアルバムです。山内はまた、カバーアートの写真とデザインもしました。
アキの音楽は、はっきりとした控えめな旋律のラインで動き、ミニマリストのジェスチャーが優しく辛抱強く空間に広がっていく様子を探る非常に個人的な音の世界を作り出しますが、感傷性はありません。山内と山崎の相互作用は完全に直感的で、成長し、自然に分岐し、ゆったりとしたペースで独自のメロディックなコアを見つけます。 3曲に米増を加えることで、微妙なリズミカルなレイヤーが加わります。
この種の音楽は確かに私たちの困った時代にいくつかの治療上の価値があります。
AKI を聴いて 心地よかったです ジャケットもシンプルでいいですネ
山内桂さんとの出会いは 2010年に三重県立美術館の「ひろがるアート」展の一環で〈息〉をテーマにした催しで それぞれのソロ演奏と共演とレクチャーをした時でした
その時の学芸員と 今は亡き藤島寛さん(心理学教授)が企画され かれが当時ベタ惚れだった山内さんを迎えられたことと記憶しています ぼくはその時 海外で「磐笛」を失くしたばかりで 偶然人からいただいた「函石の笛」を吹奏したのですが 10分間ほどで息切れてしまったけれど 山内さんたるや 延々とミニマル手法のサックスを吹いてたのが 共に YouTubeにあげられて 確か今も聴くことが出来ます
AKI は 僭越ながら これまで知らなかった山内さんの音楽に触れることが出来ました 兎に角 息の修験者としての先入観を持っていましたから・・・
山崎昭典さんとの出会いにしても 以前宇都宮泰さんが開催されていた高貴寺ライブの折だったですネ あの時のダイナミック・ギターは 実に耳新しい音でした
その後 丹後に移住してからは ギターというポピュラーな楽器を現代にどう生かすかということを課題にしてたのでしたネ ぼくは 昭典さんの演奏に接する度に〈強靭な爪〉を 密かに観察してきたわけですが そこにも音の修験者を認めるものです だから 二人は 天の引き合わせ〈必然〉であったと思っています
二人から生まれ出る安心感のあるサウンドに包まれる時 幸せを感じます
これからも 息長く世界を浄化していっていただけるよう 切に願います
Jvtlandtレーベルの新作、サガインのアルバム「AKI」(JVT0020)は、イージーリスニングジャズ風味だけど非常に魅力的でメロディアスで、やや風変わりです。このトリオは、作曲とサックス奏者の山内桂が率い、山崎昭典の素晴らしいギターと、ベース奏者の米増博俊が数曲に登場します。
この非常に独創的な音楽と比較するものはマヘルシャラルハッシュバズを除いてあまりありません。 AKIはそれほどスケッチ的でも図式的でもありませんが、子供のような純粋さや作曲と編曲のある省略記号が許される、本物のシンプルさがあります。つまり、フレーズが完全に残ってなかったりコードが完成していない、などのギャップが明言ではなく提示されているのです。聴き手がこのシンプルな魅力に降伏できたとき、作品に優れた意味のある質があることの説得力を持ちます(演奏者を初心者と間違えるべきではありません)。ギタリストは確かにそれを「理解」します。彼は2018年グループに参加し、サガインは日本と台湾をツアーしました。山崎はさざ波をピッキングして安定したパルスをもたらし、マエストロの物憂げな繰り返すサックスフレーズをサポートします。
山内桂は、1970年代以来、あらゆる形態のコンテンポラリージャズやフリーインプロヴィゼーションに興味を持ち、時々コンサートを主催し、ベイリーやブロッツマンなど、ヨーロッパやアメリカの巨匠を招聘しました。彼はサックスを手に取り、ソロやグループのレコーディングを始めました。彼は2007年にノルベルト・メスランのFor For Earsのレーベルに出演しました。また、Michel DonedaやToshimaru Nakamuraとも録音しました。興味をそそられた方は、もっと深く掘り下げて彼のサルモサックスアンサンブルの作品を聴きたいと思うかもしれません。彼は、大都市に集まる音楽文化に積極的に関わらず、「アウトサイダー」のようなものかもしれません。彼は別府で育ちました。温泉で有名な南日本の一角です。私のお気に入りのルネサンスの画家ピエロ・デラ・フランチェスカは、ローマに住んでなかったため、レオナルドやミケランジェロなどの「主要な画家」に数えられなかったことを思い出しました。その結果、彼は一部のコメンテーターによって彼の驚異的な才能にもかかわらず、ほとんど美術史から閉め出されました。
■ 『Ta Yu Ta I(たゆたい)』 (2023年)
AD(山崎昭典+drowsiness)feat. 鈴木昭男、安田敦美

レーベル:HOREN MIMI-030
発売日:2023年3月18日
価格:2750円(税込)
アートワーク:中山晃子
マスタリング:宇都宮泰
解説:デヴィッド・トゥープ 畠中実 伊東篤宏 内橋和久 山田唯雄
収録曲目
1. 祝吹 Shukusui
2. 潺 Seseragi
3. 時乃器械 Time Machine
4. 芽吹 Mebuki
5. 庭楽 Teiraku
6. 紡奏士 Bōsōshi
出自の異なる二人のギタリスト、山崎昭典とdrowsinessによるユニットAD(エーディー)、サウンドアーティストの鈴木昭男、シンガーの安田敦美が融合。
たゆたい、流れ出すゆるやかな音世界。
「声、笛、弦、木、金属、それぞれの音が物質から放たれたときに生まれる温度を耳に感じる。
音同士の混ざりはまるで、口の中で氷が溶けてゆくような、瞼に感じる太陽の温もりのような。
特別で自然な現象が聴こえる。」 中山晃子
石は大声で息をつき、鳥は冷たい池の表面すれすれに飛び、沈黙の中に舞い上がる。
そして夜。孤独な旅人が声を上げる。風がその声を拾い、松葉をなぞって運び、言葉は風となる。流されて詠唱となり、魔力が澄んだ空間に集結する。
旋回する呪文、日向で干された服のように乾いた、円、感動を呼び起こす感覚、葉の間を縫って降ってくる雨の懐かしさ、記憶に戻っていく。
発芽する種子。歓喜が昂まるのが聞こえる。泣き悲しむ音、闇で光る猫の目、毛皮に光があたり、徐に深い静寂へと歩み寄る。
洞窟の笛は空中で留まり、ゆっくりした鶴の足取りはかろうじて地面に触れ、翼を持ち上げて踊る。
つららが落ち、魔法が集まる、太陽の空間。
デヴィッド・トゥープ(音楽家/著述家/サウンド・キュレーター)
この音楽はどこからやってきたのだろうか、そして、どこへ帰っていくのだろうか、という思いが去来する。
なんという時間の流れだろう。
もちろん、これはある時間と空間を共有した演奏家たちによる音楽であり、このいま、聞こえている音楽でもある。
そして、それは空間に発されれば、どこかへ消え去ってしまう。
しかし、この音楽がいつかどこかの時空を超えてやってきて、現在と交差し、そして未来に去っていくものだと考えることはできるだろうか。
この音楽が流れ始めると、たしかに、時空は一変する。時間は進んでいくというよりも、垂直に立ち上り、渦を巻きはじめる。
音楽というには組織化されていない。かといって、無秩序なノイズなのでもない。なにかの起源を見るような体験だ。
そして、それはまたどこかへと去っていった。
畠中実(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] 主任学芸員)
ここで鳴っている異様なまでに音の粒立ちと分離の良い音楽に私は、巷に溢れている いわゆる「ambient」という括りのものとは全く異質な[音触り]を感じた。
安易なBGM としての「癒し」やら「安らぎ」とは無縁であり、むしろそういった聴かれかたをさりげなく拒み、ファンタジーではなくもっと本能的な怖さと厳しさを私に感じさせた。
それは、これからの私達が耳を傾けるべき音だと思う。
伊東篤宏(美術家/オプトロン奏者)
4人の奏でるこの音楽が、ニューエイジやアンビエントとカテゴライズされるものと一線を画する、ということは間違いない。
それは冒頭の鈴木昭男氏による、能楽を想起させる笛の音色の推進力によってまず明示される。
まるで、音自身が逞しい意志を宿らせたかのように、傾聴する我々の耳と意識を叩き起こし、楽曲へと誘導する。
もしも、聞く者がうかうかと"聴いてなかった"ら、心地良いキレイな音でしかない音、それは実は、毒にも薬にもならない、どころか、毒のある音。
毒は徐々に委ねられた耳と意識を刺激し、眠ったまま覚醒するように、あるいは自覚的に催眠術に晒されるように、聴く者を音楽の奥深くまで誘い込む。
そして僕は最後まで深く聴き入った。
まんまと彼らの術中にハマったわけだが、とても良い時間を過ごさせてもらったことに感謝したい。
耳を洗う音楽。
内橋和久(ギタリスト/ダクソフォン奏者/作曲家)
「海の京都」と呼ばれる京都府北部は、祖父母を訪ねてよく訪れた思い出深い地。
石笛の音に、はっとその地を想起させられた。まだ古い神話なんかを今よりリアルに感じた子供の頃の景色が巡る。
インスピレーションとは、人が過ごしてきた全ての時間という岩盤から滴る点滴の事を言うのだと勝手に思っている。
ここには多分「丹後」という地層で濾過された水が流れている。
非数学的な音が重なり、水の潺となる。
この地の日常的な自然の音が、能動的な「聴く」という姿勢によって作品として切り取られたものに感じられる。
ギターは恰もそこに「人」の存在を示すかのようである。
人工物としての存在感を放ちつつも他の音像と呼応する様は、付かず離れず自然と共生する人の営みの象徴にも思えた。
ふと作庭における「見立て」という言葉が過った。
「庭」とは実際の自然の模写ではなく、風景を咀嚼し、作者自らの心象を投影したものであるべきらしい。
録音された作者の「聴く」は、受け手の「聴く」により更に無限に変化するだろう。その意味で、我々もまた音の紡ぎ手となるのだ。
山田唯雄(クラシック・ギタリスト)